02.歩み 古くからの良さと新しいアイデアを併せ持つ唯一無二の日本旅館

老朽化した旅館を立て直したい。鈴木社長の熱い心意気から始まった浜の湯の歩み。日本の旅館の良さをお客様に体感していただくためにはどうしたらいいか。宿の取り組みの歴史をひもときます。

まずはハード面の高質化を実現

平成6年ごろまでの浜の湯は、旅行会社にも相手にされない部屋数20室の老朽化した旅館でした。いったいどうすれば理想の旅館にすることができるか、鈴木社長は思考の末、食に特化した宿にする方針を打ち出しました。東伊豆といえば海の幸。稲取漁港の入札権があることから、鮮魚の仕入れを充実させ、朝から舟盛りという朝食を出しリピーターを増やしていきました。そして平成7年、念願のリニューアルを果たし中規模旅館として生まれ変わりました。

旅館は10年に一度、設備投資をし、増改築ができればいいと考えられています。しかし10年に一度ではお客様のニーズに応えることができない。鈴木社長はそう考え、平成14年に露天風呂付き客室を8室新設、19年にはさらに8室の増設を実現しました。また最上階に大パノラマが楽しめる大露天風呂を設置、前代未聞の大露天風呂の貸切プランも考案。あらゆる世代のあらゆるお客様が満足できる宿づくりを目指すと言います。

10年間続けた新卒採用、その真意とは

料理、客室、温泉の充実はもちろんですが、やはりお客様を感動させるのは心からのおもてなしです。日本の昔ながらの旅館は、お出迎えからお見送りまでひとりの客室係がお客様に寄り添い、心を配りました。大切な接客の仕事を任せる人材を育成するために浜の湯が取り組んでいることに、10年以上続けている新卒採用がありました。若いスタッフは接客の厳しさと喜びを日々感じています。

客室リーダーとして働く美紀さん。後輩に頼られる存在です。「お客様がご自宅にいるように自然に寛いでいただけるように、お手伝いをしたいと思っています。二度、三度とご指名をいただき、娘のように可愛がってくださるリピーターの方や、ブログにコメントをくださるお客様など、ほんとうに嬉しく感じています」新入社員のなおさんは、学校のような楽しい職場だと話します。「言葉使いや所作、お料理の説明など、先輩から教えていただきながら精一杯努めています。指名をいただけるように頑張ります」

若き世代のアイデアから生まれたプロポーズサプライズ

浜の湯では旅の演出のひとつとして、プロポーズのお手伝いをしています。考案者のフロントマネージャー・大津さんは、リピーターの方からの相談に応えたのを機にこのプロポーズサプライズを思いつきました。「例えば、事前に男性のお客様とメールや電話でお打ち合わせをして、宿に到着後、お相手の女性にエステをしていただき、その間にスタッフが客室にお邪魔して、フラワーアレンジメントやリボン・テープなどで演出のためのデコレーションをします」

成功率100%を誇るプロポーズサプライズ。大津さんは、プロポーズをされたお客様から、後日、結婚の報告をいただくときが一番嬉しいと話します。「カップルでいらしたお客様がご夫婦になり、また来館くださり、さらにお子様を連れて来てくださる。そんなお客様の人生の節目の瞬間に立ち会えるように、サポートをさせていただきたいです。お客様のご要望にお応えできるように、旅館だからこそできる演出を考えたいですね」