伝統の「おもてなし」で里山里海を守る!匠・和倉温泉「加賀屋」さん

能登半島のつけ根に位置する和倉温泉は、海から湧き出る温泉で 人気の一大観光地です。ここにも里山里海の恵みがしっかりと息づいています。 日本を代表する老舗旅館・加賀屋さんにとっての里山里海とは?

料理や温泉で里山里海を体験してもらう

 和倉温泉の老舗旅館である加賀屋さん。旅行新聞新社が主催する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」において33年連続で総合1位に選ばれるなど、日本を代表する温泉旅館のひとつです。加賀屋さんと言えば、「おもてなしの心」を日本中の旅館に広めたことでも知られています。

「可能な限り地元の食材を使用し、地元の調理法で献立を考え、能登ならではの料理を提供する。これが、お客さまに能登の里山里海を体験していただくことになると考えています」という加賀屋の料理には、能登で採れた山菜、その日に獲れたばかりの海産物、地元で育てられた希少な能登牛など、里山里海を食で楽しむ仕掛けがふんだんに盛り込まれています。

 また、和倉と言えば日本でも珍しい「海から湧き出た温泉」としても有名です。「温泉に入浴していただくこともまた、里山里海の体験につながると考えています」という加賀屋さんのお風呂で、これまで多くの観光客が“海の恵み”としての温泉を楽しんできました。

伝統を守り、変化に対応していく

 加賀屋さんでは、単に里山里海の恵みを味わってもらうだけでなく、その保全活動にも力を入れています。駐車場に電気自動車の充電器を設置して「スマート・ドライブ・プロジェクト」を応援し、二酸化炭素の排出を抑えるエコカーでの観光を支援。加賀屋さんの「おもてなしの心」とは、小さな気配りや心配りを基本としたサービスですが、里山里海の保全に関しても、地道な努力を絶やさないのが加賀屋流と言えます。

「どうしたらお客様に喜んでいただき、満足していただけるかを第一に考えて行動する。それが加賀屋のおもてなしです。明治39年の創業からずっと守っている伝統を継承しつつ、これからも日々精進していきたいと思います」

 古き良き文化を守り、変化にも柔軟に対応していく。加賀屋さんで生まれた「おもてなしの心」には、里山里海とともに生きる能登の人間の心意気が込められているかもしれません。

海から涌く温泉で、
塩分の高い泉質が特徴。
七尾湾を望む
ロケーションが抜群!

館内の巨大な
お土産コーナーには、
能登中の名産品を
取り揃えています。

能登の魅力を発信し、里山里海を守る!匠・多田健太郎さん

和倉温泉の老舗・多田屋の若旦那 として旅館を切り盛りしながら、 能登全域の魅力を発信するウェブサイト 『のとつづり』の運営も手がけている 多田健太郎さん。観光を能登の魅力に アクセスする「入口」と捉える 多田さんに、「里山里海と温泉」に 関するお話をうかがいました。

あぜ道や夕日の中に宿る能登の魅力

 里山里海を五感で味わって欲しい──。旅館を営む者として、常々このような思いを抱いています。能登の料理を食べ、能登の景色を堪能し、能登の人々と交流する。そうやって全身で触れていただくことが、里山里海の魅力を味わう上で最も効果的な方法だと思っています。

 誤解を恐れずに言うと、能登にはこれといって目立つものがありません。しかし、一歩ふみ込んでみると、季節を教えてくれるあぜ道の美しさであったり、毎日表情を変える夕日であったり、シャイで素朴な人々の優しさであったり、半島に特有の地域ごとに異なる文化や風習であったりと、何気なさの中に宿る様々な魅力に気づくはずです。

醬油屋の女将さんにまた会いたい!

 こういった里山里海に宿る無数の魅力を、少しでもみなさんに知ってもらいたいと思って始めたのが、観光サイト『のとつづり』です。能登に暮らすおもしろい人々や、一般的なガイドにはなかなか出てこない風景やお店などを、自分の足で取材しながら紹介しています。これを作っていて思うのは、住んでいる自分たちですら気づいていない魅力が、能登にはまだまだたくさんあるということ。関われば関わるほどいいところが見つかるというのも、大きな魅力のひとつです。

 例えば七尾の一本杉通りというところは、「語り部処」という企画をやっており、単なる観光ガイドではなく、能登の人としてのコミュニケーションを大切にしています。その結果、「醬油屋の女将さんにまた会いたい」「お茶屋のご主人の話をまた聞きたい」といった、人の魅力で観光客を呼ぶというおもしろい状況が生まれています。

 また、能登のグルメを楽しむにしても、寒ブリがどのように獲れ、揚げ浜塩がどのようにして作られるのかを目の当たりにすれば、単に食べるだけでは得られない魅力を享受できるはず。それが里山里海を五感で味わうということだと思っています。

すべてが有機的につながる里山里海

 能登は海に囲まれた土地であり、文化が熟成し、歴史の積み重ねが色濃く残っているところです。「農業システム」として世界農業遺産に認定されたことが象徴しているように、海も、山も、食も、人も、時間も、すべてが有機的につながっているのが能登の特徴です。

 しかしそれは、とてものんびりしたものであり、心と時間に余裕がないと十分に堪能できないものだと思います。揚げ浜式製塩も、ぼら待ちやぐらも、現代人の感覚からするとずいぶん気の長いことをしていますよね(笑)。その“のんびりさ”が能登の豊かさを表しているような気がします。穏やかな里山里海の魅力を、ぜひ味わいに来てください。

今から約40年前、
和倉温泉の中心地から
現在の海沿いへと移転した多田屋。
七尾湾に沈む美しい夕日を、お客さんに
一番近くで味わって欲しいというのが
移転の理由だったそう。

多田屋の6代目館主・多田健太郎さん。

多田屋の6代目館主・多田健太郎さん。
能登の魅力を発信する「のとつづり」を制作。
若い感性で能登の魅力を掘り起こす
“能登のPRマン”です!

里山里海をめぐるオススメ宿

加賀屋 (和倉温泉)

プロが選んだ日本一の“おもてなし”

細かい気配りが隅々まで行き渡る「おもてなしの心」を全国に広めた知る人ぞ知る宿。
フロントから12階までの吹き抜けの壁を飾る加賀友禅が圧巻です。

多田屋 (和倉温泉)

和倉の夕日に染まる宿

和倉の奥座敷、中心街から少し離れた海辺に位置する老舗旅館。
七尾湾を一望するガラス張りのロビーや、海に面した桟橋から見える夕日が感動的です。

百楽荘 (能登町)

日本百景を望む洞窟風呂の宿

全部屋から九十九湾の景色が一望できる能登町の個性派旅館。 手彫りで作り上げた洞窟風呂が人気で、ロマンチックなライトアップが楽しめます。

お宿たなか (輪島市)

輪島を体感できる漆の宿

食器は輪島塗、部屋の壁は珪藻土。貸し切り露天風呂には県木であるアテの木を使用。 館内に輪島テイストが行き渡る、こだわりの人気宿です。

ランプの宿 (珠洲市)

幻想的な50個のランプが灯る宿

能登半島の突端、金剛崎の近くに位置する小さな人気宿。断崖絶壁のロケーションが一望できる露天風呂が人気。 館内に灯る50個のランプが幻想的です。

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